- 同じEAでも、最適化に使う期間(学習窓)を変えるだけで、12ヶ月の結果は−10%から+76%まで割れた
- パラメータを増やして「改善」した版は、最大ドローダウンが35.6%に悪化した
- いちばん良い数字(+76%)は、稼働した月がわずか2ヶ月。良い数字ほどサンプル数を疑うべき
「バックテストでは右肩上がりなのに、実際に動かすと負ける」。EAを使ったことがある人なら、一度は経験しているはずです。原因として最もよく挙がるのが過剰最適化(カーブフィッティング)、つまり過去のデータにパラメータを合わせすぎて、未来の相場で通用しなくなる現象です。
言葉としては有名ですが、「どのくらい崩れるのか」を実データで示した記事は多くありません。そこで、私が開発中のEAで、最適化の条件だけを変えた検証を行いました。失敗した結果も含めて、そのまま公開します。
検証の条件
検証に使ったのは、ゴールド(XAUUSD)の5分足で動く、ボリンジャーバンドとRSIを組み合わせた逆張りEAです。私が配布しているGSS2026 Alphaとは別のロジックです。
- 検証方法:月次のウォークフォワード検証。毎月、その直前の一定期間(学習窓)のデータでパラメータを最適化し、翌月にだけそのパラメータで運用した場合の成績を記録する
- 検証期間:2025年7月〜2026年6月の12ヶ月(学習窓12ヶ月の版のみ、データの都合で2026年1月〜6月の6ヶ月)
- 見送りのルール:最適化の結果が「PF1.2以上・相対ドローダウン15%以下・取引10回以上」を満たさない月は、翌月の運用を見送る
- 資金とロット:元本10万円、0.1ロット固定。MT5のストラテジーテスターを使用
ポイントは、翌月の成績は最適化に使っていないデータで測っていることです。過去に合わせ込んだパラメータが未来でも通用するかどうかを、そのまま確かめられます。
結果:設定の違いだけで−10%〜+76%に割れた
| 構成 | 稼働した月 | 勝ち月 | 12ヶ月の通算損益 | 最悪月の最大DD |
|---|---|---|---|---|
| 学習窓3ヶ月 | 5 / 12 | 1 / 5 | −10.0% | 22.3% |
| 学習窓6ヶ月 | 3 / 12 | 3 / 3 | +53.1% | 21.7% |
| 学習窓12ヶ月 | 0 / 6 | — | ±0%(全月見送り) | — |
| 学習窓6ヶ月+トレーリングストップ | 2 / 12 | 2 / 2 | +76.0% | 17.7% |
| 学習窓6ヶ月+トレーリング+RSI等も最適化(6パラメータ) | 5 / 12 | 3 / 5 | +27.2% | 35.6% |
※ストラテジーテスターによる検証結果です。リアル口座での成績ではありません。損益は元本10万円に対する割合です。
読み取れること① 学習窓が短いと、直近のノイズに合わせすぎる
学習窓3ヶ月の版は、5ヶ月稼働して勝ったのは1ヶ月だけでした。直近3ヶ月だけを見て最適化すると、その期間にたまたま効いた設定を拾いやすく、翌月には相場の性格が変わって通用しなくなります。過剰最適化の典型的な崩れ方です。
読み取れること② パラメータを増やすと、ドローダウンが悪化する
トレーリングに加えてRSIの閾値なども最適化の対象にし、パラメータを4つから6つに増やした版は、稼働月こそ増えたものの、最悪月のドローダウンが35.6%まで悪化しました。調整できるつまみが増えるほど、過去のデータには合わせやすくなりますが、そのぶん未来で外れたときの傷が深くなります。
反対に、トレーリングストップだけを足した版は、最適化するパラメータの数を4つのまま据え置き、ドローダウンも17.7%に下がりました。「足すなら、最適化の対象を増やさない改良」のほうが崩れにくいという結果です。
読み取れること③ いちばん良い数字ほど、疑う必要がある
表の中で最も成績が良いのは+76%の版です。ただし、この版が実際に稼働したのは12ヶ月中2ヶ月だけです。学習窓6ヶ月の+53%も稼働は3ヶ月で、しかも利益の約75%は1つの月に集中していました。
2〜3ヶ月の結果では、実力なのか運なのかを区別できません。私自身、この結果を「勝ちパターンが見つかった」とは判断しておらず、リアル口座でのフォワードテストで確かめる段階だと考えています。
無料EA「GSS2026 Alpha」は、公開している検証結果と弱点、フォワードテストの週次実績をすべて開示しています。この記事の5つのチェックを当てはめて判断してください。
GSS2026 Alpha(無料)の詳細を見る → PR・自社開発。EAを選ぶときに確認したい5つのポイント
この検証から、EAの成績表を見るときに確認すべき点をまとめます。販売ページやランキングサイトの数字を見るときにも、そのまま使えます。
- 取引回数と検証期間は十分か数十回の取引や数ヶ月の期間では、運と実力を区別できません。目安として、少なくとも1年以上・数百回規模の取引があるかを確認します。
- 最適化に使っていない期間の成績があるか最適化した期間の成績だけを見せられても、それは「過去に合わせた結果」です。別期間(アウトオブサンプル)やフォワードテストの成績が併記されているかを見ます。
- パラメータが多すぎないか調整項目が多いEAほど、過去の数字はいくらでも良くできます。成績が良いのに設定項目が非常に多い場合は、慎重に見るべきです。
- 最大ドローダウンと最悪の月が書かれているか利益の数字だけでなく、最も悪かった局面がどれだけ悪かったかを確認します。書かれていない場合は、書けない理由があると考えたほうが安全です。
- バックテストとリアル運用の差が開示されているかリアル口座の実績を継続して公開しているか、そしてバックテストとの差がどれくらいかを確認します。差が大きいほど、バックテストが過去に合わせ込まれている可能性が高くなります。
まとめ
過剰最適化は「起きるかもしれないリスク」ではなく、条件次第で普通に起きる現象です。同じロジックでも、最適化のやり方ひとつで−10%にも+76%にもなります。
EAを選ぶときは、成績の良さそのものよりも、その数字がどれだけのサンプルから、どんな条件で出たのかを見てください。数字の出どころを説明できないEAは、どれだけ成績が良くても候補から外して構いません。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。FX・CFD取引には元本を失うリスクがあります。過去の成績は将来の成果を保証しません。投資判断はご自身の責任で行ってください。