- 開発中の自作ロジックの1,456通りの設定について、同じ取引のまま費用の見積もりだけを3段階に変えて、直近1年(2025年10月〜2026年9月)の成績を計算し直した
- 為替の15分足では、PF1.0以上の設定が31から15に半減。1時間足でも115から87に減った。一方、ゴールドなどの金属は52・58のまま変わらなかった
- 差が出た理由は、1回の取引の値幅に対して費用がどれだけ大きいか。為替では1回あたりの損益の約3%、金属では約0.2〜0.3%だった
バックテストの成績は、費用をどう見積もるかで変わります。テスターに記録されたスプレッドだけで計算するのか、実際の約定でずれる分(スリッページ、滑り)まで入れるのか。この違いで、「勝てる設定」が「負ける設定」に変わることがあります。
では、実際にどのくらい変わるのでしょうか。手元の検証データで、取引そのものは同じまま、費用の見積もりだけを変えた比較をしてみました。
検証のやり方
使ったのは、開発中の自作ロジック(1時間足・15分足で動くものと、1分足・5分足で動く別のもの)です。為替16ペアと金属3銘柄(ゴールド2つ・シルバー1つ)に、それぞれ設定を変えて、合計1,456通りをMT5でバックテストしました。ロットは0.02で固定しています。
見た期間は直近1年の2025年10月〜2026年9月です。この期間は実際のティックで検証しています。費用は次の3段階で計算しました。
| 見積もり | 差し引く費用 | 往復の追加費用 |
|---|---|---|
| ① 滑りなし | テスターのスプレッドだけ | 0pips |
| ② 通常 | ①+スリッページ片道0.2pips | 0.4pips |
| ③ 厳しめ | ①+スリッページ片道0.5pips+スプレッドの上乗せ0.3pips | 1.3pips |
※ゴールドの1pipは0.1ドルとして扱っています。取引の日時・方向・決済はすべて同じで、1回ごとの損益から費用を差し引く額だけを変えています。
PF1.0以上だった設定の数
1時間足・15分足のロジックについて、3段階の費用でPF(総利益÷総損失)が1.0以上だった設定の数を数えました。
| 銘柄・時間足 | 設定数 | ① 滑りなし | ② 通常 | ③ 厳しめ |
|---|---|---|---|---|
| 為替・1時間足 | 384 | 115 | 103 | 87 |
| 為替・15分足 | 384 | 31 | 25 | 15 |
| 金属・1時間足 | 72 | 58 | 58 | 58 |
| 金属・15分足 | 72 | 52 | 52 | 52 |
為替の15分足では、滑りなしでPF1.0以上だった31通りが、厳しめでは15通りになりました。半分以上が「勝ち越し」から外れたことになります。1時間足でも115通りが87通りに減りました。
PF1.2以上で数えると、為替の1時間足は73→70→49、15分足は10→8→5でした。基準を上げるほど、費用の影響がはっきり出ています。
一方、金属は1時間足が58通り、15分足が52通りで、3段階どれでも同じでした。PFの中央値も、1時間足で1.331→1.328→1.322と、ほとんど動いていません。
差が出た理由:1回の値幅に対する費用の大きさ
同じ「往復0.9pipsの追加費用」でも、為替と金属でこれほど差が出たのは、1回の取引で動く金額がまったく違うからです。設定ごとの中央値で比べると、次のようになりました(0.02ロット)。
| 銘柄・時間足 | 1回の損益の大きさ | 厳しめで増える費用 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 為替・1時間足 | 607円 | 18円 | 約3.0% |
| 為替・15分足 | 502円 | 18円 | 約3.6% |
| 金属・1時間足 | 12,740円 | 28.5円 | 約0.2% |
| 金属・15分足 | 10,484円 | 28.5円 | 約0.3% |
※「1回の損益の大きさ」は、勝ち負けを問わない1回あたりの損益の絶対値の平均(設定ごとの値の中央値)です。
為替では、1回の損益に対して3%ほどの費用が上乗せされます。PFが1.0前後の設定にとって、この3%は勝ち越しと負け越しを分けるのに十分な大きさです。金属は1回の値幅が大きいため、同じpips数の費用はほとんど誤差の範囲でした。
時間足が短いほど1回の値幅は小さくなるので、15分足のほうが1時間足より影響を受けやすくなります。
1分足・5分足では、滑りを入れる前に負けていた
1分足・5分足で動く別のロジックは、為替で月に30〜40回ほど(設定の中央値)取引します。こちらは為替の512通りのうち、滑りなしの時点でPF1.0以上だったのは1通りだけで、通常の見積もりにすると0通りでした。テスターのスプレッドだけで、すでに負け越していたことになります。
値幅の小さい売買をくり返すロジックでは、費用が成績のほとんどを決めてしまう、ということがよく分かる結果でした。
この検証から考えたこと
- バックテストには滑りを入れて確かめるテスターのスプレッドだけでPF1.0を少し超える設定は、実際の約定では負け越しになる可能性があります。少し厳しめの費用でも残るかを見ておくと安心です。
- 1回の値幅と費用を比べてみる平均の損益が小さい売買ほど、費用の影響が大きくなります。成績表の平均利益・平均損失と、スプレッドのコストを並べてみると見当がつきます。
- 「費用に強いか」も選ぶ基準にする今回のように、費用を厳しくしても結果が変わらない銘柄・時間足もあります。PFの高さだけでなく、費用を変えても崩れないかを見ておくと、実運用との差が小さくなりやすいと考えています。
まとめ
同じ取引のまま費用の見積もりだけを厳しくすると、為替の15分足ではPF1.0以上の設定が31から15に、1時間足では115から87に減りました。金属はどの見積もりでも変わりませんでした。
差を生んだのは、1回の値幅に対する費用の割合です。私の自作EAの検証では、今後も「厳しめの費用」で判定を続けていきます。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品やEAの売買・利用を推奨するものではありません。記載の数値は開発中の自作ロジックのバックテスト結果です。スリッページとスプレッドの上乗せは仮定の値で、実際の約定とは異なります。バックテストと実際の運用では、スプレッドや約定の違いにより結果が変わることがあります。FX・CFD取引には元本を失うリスクがあります。過去の成績は将来の成果を保証しません。投資判断はご自身の責任で行ってください。