- 証拠金維持率は「有効証拠金 ÷ 必要証拠金」。これが業者の決めた水準を下回ると、ポジションが強制的に決済される(ロスカット)
- 同じ0.1ロットなら、レバレッジが高いほどロスカットまでの距離は遠くなる。危険を生むのは倍率ではなく、持っているロットの大きさ
- ロスカットは損切りではない。発動したときには、口座の大半を失っていることが多い
「ロスカットされた」という言葉は、FXでいちばん聞きたくない言葉のひとつです。でも、どんな計算で、どのタイミングで起きるのかを数字で確かめたことのある人は、意外と多くありません。
ここでは、口座10万円・ドル円150円の例で、必要証拠金、証拠金維持率、ロスカットまでの距離を計算してみます。前回のロット計算の考え方とあわせて読むと、ロットの大きさがなぜ大事なのかがはっきりします。
3つの言葉を整理する
- 必要証拠金:ポジションを持つために口座に置いておく必要のあるお金。取引金額 ÷ レバレッジで決まります。
- 有効証拠金:口座残高に、今持っているポジションの含み損益を足したもの。
- 証拠金維持率:有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100(%)。含み損が増えると下がっていきます。
証拠金維持率が業者の決めた水準(ロスカット水準)を下回ると、ポジションは自動的に決済されます。この水準は業者によって異なり、100%のところもあれば、50%や20%のところもあります。取引する業者の水準は、必ず確認してください。
計算例:口座10万円、ドル円150円
ドル円の1ロットは10万通貨とします(多くの業者の場合)。0.1ロット(1万通貨)なら取引金額は150万円、1pip動くと100円の損益です。
| ロット/レバレッジ | 必要証拠金 | 持った直後の維持率 | 維持率100%まで | 維持率50%まで | 維持率20%まで |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.1ロット/25倍 | 60,000円 | 166.7% | 400pips | 700pips | 880pips |
| 0.1ロット/500倍 | 3,000円 | 3,333.3% | 970pips | 985pips | 994pips |
| 0.5ロット/500倍 | 15,000円 | 666.7% | 170pips | 185pips | 194pips |
| 1ロット/500倍 | 30,000円 | 333.3% | 70pips | 85pips | 94pips |
※「〜まで」は、含み損がその分だけ逆に動いたときにその維持率に達する、という意味です。計算を簡単にするため、必要証拠金は価格が動いても変わらないとし、スプレッドやスワップは含めていません。25倍のレバレッジでは、1ロット(必要証拠金60万円)は口座10万円では持てません。
表から読み取れること
① 同じロットなら、レバレッジが高いほどロスカットは遠い
0.1ロットで比べると、25倍では400pipsで維持率100%に達しますが、500倍では970pipsまで耐えられます。必要証拠金が小さいぶん、維持率に余裕があるからです。「高レバレッジは危ない」という言葉だけを覚えていると、ここで混乱します。
② 危険を生むのは、レバレッジで持てるようになった「大きなロット」
500倍のレバレッジがあれば、口座10万円でも1ロットを持てます。そうすると、70pips逆に動くだけで維持率100%、85pipsで50%です。高レバレッジの本当の怖さは、倍率そのものではなく、少ない資金で大きすぎるロットを持ててしまうことにあります。
③ ロスカットが発動するときには、口座の大半がなくなっている
1ロット・500倍の例で、ロスカット水準が50%なら、発動するのは含み損が85,000円になったときです。口座10万円の85%を失った時点で、ようやく強制的に止まります。ロスカットは口座がマイナスになるのを防ぐための最後の仕組みで、損失を小さく抑えてくれるものではありません。
国内口座(レバレッジ25倍)の場合:数量1.5倍で余裕が激減する
国内FXのレバレッジは最大25倍です。口座10万円・ドル円150円で、1万通貨と1.5万通貨を比べると次のようになります(必要証拠金は取得時のまま一定とした近似値)。
| 数量 | 必要証拠金 | 持った直後 | 1円逆行 | 2円逆行 | 3円逆行 | 4円逆行 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1万通貨 | 60,000円 | 166.7% | 150.0% | 133.3% | 116.7% | 100.0% |
| 1.5万通貨 | 90,000円 | 111.1% | 94.4% | 77.8% | 61.1% | 44.4% |
1万通貨なら4円(400pips)逆行してようやく維持率100%ですが、1.5万通貨では約0.67円で100%に達します。数量を5割増やしただけで、耐えられる値幅は6分の1ほどになります。
ロスカットに頼らないために
- 損切りは自分で、ずっと手前に置くロスカットの前に、自分で決めた損切りで終わるようにします。前回のコラムの式で、1回の損失を口座の1〜2%に収めるロットにすれば、維持率がロスカット水準に近づくことはまずありません。
- ポジションを増やすときは、合計で考える同じ方向に複数のポジションを持つと、必要証拠金も含み損も合計で効いてきます。1つずつは小さくても、合計すると大きなロットになっていることがあります。
- 維持率は「余裕」の目安として見る維持率が十分に高いのは安全の証拠ではなく、まだロスカットまで距離がある、というだけです。損失の大きさは、ロットと損切り幅で管理します。
まとめ
証拠金維持率とロスカットの仕組みは、計算してみるとシンプルです。そして、レバレッジの倍率よりも、持っているロットの大きさが結果を左右することがわかります。
ロスカットは、相場に負けたあとの最後の安全装置です。そこに頼らず、自分で決めた損切りで終われるロットにしておく。それが、口座を長く守るためのいちばん確かな方法です。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。FX・CFD取引には元本を失うリスクがあります。過去の成績は将来の成果を保証しません。投資判断はご自身の責任で行ってください。