- 同じロジックの24通りの設定を、ゴールドで6年分、1年ずつ比べた。直近1年でいちばん良かった設定(PF1.47)は、その前の5年のうち3年で負け越していた
- ある年の1位の設定は、次の年には24通り中4〜15位。6年すべてでPF1.0以上だった設定は1つもなかった
- 一方で、何年も前に良かった設定がずっと続くわけでもない。私は「直近12か月で選ぶ → 選ぶのに使っていない次の3か月で確かめる」をくり返し、1点だけ良い設定は選ばないようにしている
EAの設定を選ぶとき、「昔の相場は今と違うのだから、直近1年で一番良い設定を使えばいい」と考えたくなります。私も、古いデータより最近のデータのほうが大事だと思っています。
ただ、直近1年だけを見て一番良い設定を選ぶと、どうなるのか。開発中のロジックで、6年分を1年ずつ区切って並べてみました。
検証の条件
- ロジック:1時間足で引いたトレンドラインを抜けたら、決済して反対向きに入る(ドテン)。17銘柄で動かした記事と同じ、開発中の検証用EAです(配布はしていません)
- 銘柄:ゴールド(XAUUSD)
- 設定:24通り(線を引く山・谷の大きさ「小・中・大」×抜けの判定の余裕×保険の損切り幅×取引する時間帯)
- 期間:2020年10月〜2026年9月の6年。10月〜翌年9月を「1年」として6つに区切った
- 費用:スプレッドに加えて、滑りを厳しめに見込んで差し引き。0.01ロット固定(MT5のストラテジーテスターによるバックテスト)
- 取引回数:1年あたり1設定116〜548回
結果①:直近1年の1位は、それまでの年はどうだったか
直近1年(2025年10月〜2026年9月)で、24通りの中でいちばんPFが高かった設定の、年ごとの成績です。
| 年(10月〜翌9月) | この設定のPF | 24通り中の順位 |
|---|---|---|
| 2020年10月〜 | 0.82 | 16位 |
| 2021年10月〜 | 0.77 | 18位 |
| 2022年10月〜 | 1.10 | 2位 |
| 2023年10月〜 | 0.95 | 14位 |
| 2024年10月〜 | 1.08 | 9位 |
| 2025年10月〜(直近1年) | 1.47 | 1位 |
※PFは費用を差し引いた後の値。PF1.0未満は負け越しです。
直近1年ではPF1.47で1位でしたが、その前の5年のうち3年はPF1.0未満でした。直近1年の数字だけを見ていたら、この設定は「安定して強い設定」に見えていたはずです。
結果②:ある年の1位は、次の年も上位に残ったか
今度は、各年の1位の設定が、次の1年でどうなったかを並べました。「1年で選んで、次の1年使う」をくり返したのと同じことです。
| 選んだ年 | その年のPF | 次の年のPF | 次の年の順位 |
|---|---|---|---|
| 2020年10月〜 | 1.60 | 0.87 | 10位 |
| 2021年10月〜 | 1.18 | 0.96 | 15位 |
| 2022年10月〜 | 1.12 | 1.12 | 4位 |
| 2023年10月〜 | 1.18 | 1.43 | 5位 |
| 2024年10月〜 | 1.54 | 1.23 | 9位 |
5回のうち3回は次の年もPF1.0以上でしたが、2回は負け越しでした。次の年の順位は4〜15位で、1位がそのまま1位を続けたことは一度もありません。いちばん良い数字は「その年たまたま相性が良かった分」を多く含んでいる、と考えたほうがよさそうです。
結果③:設定のグループで見ると、年ごとに入れ替わっていた
24通りを、線を引く山・谷の大きさで3つのグループ(各8通り)に分け、PF1.0以上だった設定の数を年ごとに数えました。
| 年(10月〜翌9月) | 山・谷 小 | 山・谷 中 | 山・谷 大 |
|---|---|---|---|
| 2020年10月〜 | 0 / 8 | 0 / 8 | 8 / 8 |
| 2021年10月〜 | 8 / 8 | 0 / 8 | 0 / 8 |
| 2022年10月〜 | 0 / 8 | 6 / 8 | 6 / 8 |
| 2023年10月〜 | 0 / 8 | 1 / 8 | 8 / 8 |
| 2024年10月〜 | 6 / 8 | 4 / 8 | 8 / 8 |
| 2025年10月〜(直近1年) | 8 / 8 | 8 / 8 | 6 / 8 |
直近1年の1位は「山・谷 中」のグループでした。このグループは、直近1年では8通りすべてがPF1.32〜1.47でしたが、2021年10月からの1年は8通りすべてがPF0.70〜0.81でした。
反対に「山・谷 大」のグループは、6年のうち4〜5年でPF1.0以上と、いちばん崩れにくいグループでした。ただ、このグループも直近1年はPF0.93〜1.23で、直近1年だけで比べると1位にはなりません。
なお、6年すべてでPF1.0以上だった設定は、24通りの中に1つもありませんでした。
なぜ、直近1年だけで選ぶと危ないのか
- 1年分の1位には、偶然の上振れが入っている24通りも試せば、どれかがその年の相場にたまたま合うのは自然なことです。取引回数の記事で計算したように、数字はもともとぶれます。
- 相場の性格は1〜2年で入れ替わる上の表のとおり、強いグループは年ごとに変わりました。直近1年の性格が次の1年も続くとは限りません。
- 「たまたまの1年」に合わせると、次の年に崩れやすい直近1年でいちばん良い設定は、直近1年に一番よく合わせ込んだ設定でもあります。これが過剰な最適化の典型的な形です。
それでも、私が直近を重視するわけ
では「長い期間でずっと良い設定」を探せばいいかというと、今回の検証では6年すべてで勝てた設定はありませんでした。古い相場まで全部に合う設定を探すと、選べる設定がなくなるか、どの年にも少しずつ負ける平凡な設定になりがちです。
また、相場の動き方そのものも変わっています。このロジックの保険の損切りは1時間足の値動きの大きさ(ATR)で決まりますが、その幅を0.01ロットあたりの円に直すと、平均で2020年10月からの1年は約1,300円、直近1年は約6,800円と、約5倍になっていました(ドル円の変化も含みます)。これだけ値動きの大きさが違う何年も前の成績を、直近と同じ重さで扱う理由は弱いと考えています。
そこで私は、次のような選び方にしています。
- 直近12か月で選び、選ぶのに使っていない次の3か月で確かめるこれを3か月ずつずらしてくり返します(ウォークフォワード)。直近を重視しつつ、選んだ後の成績で判断できます。
- 12か月を前半・後半に分け、どちらもPF1.0以上を条件にする12か月のうち一部の大勝ちだけで良く見えている設定を外します。
- 隣の設定も半分以上がPF1.0以上であることを条件にするパラメータを1段だけ変えた設定もそろって良いかを見て、1点だけ飛び抜けた設定は選びません。
このロジックで、ゴールドとドル円についてこの選び方を8回(2024年10月〜2026年9月の各3か月)くり返したところ、選んだ後の3か月のPFは8回すべてで1.0以上(1.04〜1.72)でした。直近1年(後半の4回)をつなげるとPF1.22です。ただし月の取引回数は16回ほどで、私が目標にしている回数に届かないため、このロジック単独では採用していません。
※こちらも費用を厳しめに見込んだバックテストの結果です。この選び方なら必ず通用する、というものではありません。
まとめ
24通りの設定をゴールドで6年分比べると、直近1年でいちばん良かった設定は、その前の5年のうち3年で負け越していました。ある年の1位は、次の年には4〜15位でした。直近1年の1位は「その1年にたまたま合っていた分」を多く含んでいます。
それでも、古い相場まで全部に合う設定を探すのも現実的ではありません。直近で選びつつ、選ぶのに使っていない期間で確かめる、1点だけ良い設定は選ばない。この2つを組み合わせるのが、今のところ私なりの落としどころです。
EAの設定やバックテストを見るときは、「何年分のデータで選んだのか」「選んだ後の期間でも確かめたのか」を、ぜひ一度確かめてみてください。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品やEAの売買・利用を推奨するものではありません。記載の数値は、開発中の検証用EAを費用を厳しめに見込んでバックテストした結果で、将来の成績を示すものではありません。FX・CFD取引には元本を失うリスクがあります。過去の成績は将来の成果を保証しません。投資判断はご自身の責任で行ってください。