- よく似た動きをする通貨ペア5組で、値動きの「ズレ」が広がったら戻るほうに張るペアトレードを、32通り×5組=160通りの設定でバックテストした
- 直近1年(2025年10月〜2026年9月)は160通りすべてがPF1.0未満。スリッページを入れる前(テスターのスプレッドだけ)でも、PF1.0以上は1通りしかなかった
- 2020年以降のどの年も、全設定をまとめたPFは0.48〜0.82。費用で負けたというより、費用を引く前の時点で「ズレが戻る」ことに頼れなかったのが一番の理由だった
AUDUSDとNZDUSD、EURUSDとGBPUSDのように、ふだん同じような動きをする通貨ペアがあります。この2つの値動きが一時的に離れたとき、「いずれ元に戻るはず」と考えて、上がりすぎたほうを売り、下がりすぎたほうを買う。これがペアトレード(さや取り)の考え方です。
相場の上げ下げを当てなくてよく、取引回数も増やしやすいので、魅力的に見えます。では、スプレッドや滑りを払っても、本当に利益が残るのでしょうか。開発中の自作ロジックで確かめてみました。
検証のやり方
組み合わせは、結果を見る前に次の5組に決めました。最後の1組は、反対の動きをしやすい(逆相関の)組み合わせです。
- AUDUSD × NZDUSD
- EURUSD × GBPUSD
- EURJPY × GBPJPY
- AUDJPY × NZDJPY
- EURUSD × USDCHF(逆相関)
「ズレ」は、1時間足の終値で2つのペアの比(対数の差)をとり、直近の平均からどれだけ離れているかを標準偏差の何倍か(zスコア)で表しました。zが一定の値を超えたら、2つのペアを反対向きに0.01ロットずつ持ち、zが戻ったら両方を決済します。広がり続けたときの損切りと、時間切れの決済も入れています。
| 項目 | 試した値 |
|---|---|
| 平均をとる本数(1時間足) | 100/200 |
| 入るz | 2.0/2.5 |
| 決済するz | 0/0.5 |
| 損切りのz | 3.5/4.5 |
| 時間切れ | 24時間/72時間 |
※2×2×2×2×2=32通りを5組すべてで試しました。2本の損益を合わせて「1回」と数えています。米雇用統計の前後は新規の取引をせず、週末はまたがずに決済します。MT5のバックテスト(1分足のOHLCで計算)の結果です。
費用は、前回の記事と同じ3段階で計算しました。①テスターのスプレッドだけ、②①+スリッページ片道0.2pips(通常)、③①に往復1.3pips分を上乗せ(厳しめ)です。ペアトレードは1回で2本を売買するので、費用も2本分かかります。
直近1年の結果:160通りすべてがPF1.0未満
直近1年(2025年10月〜2026年9月)の成績を、組み合わせごとにまとめました。PFは通常の費用(②)での値です。
| 組み合わせ | 月の回数 | PFの中央値 | PFの最高 |
|---|---|---|---|
| AUDUSD × NZDUSD | 3.8〜26.0 | 0.47 | 0.78 |
| EURUSD × GBPUSD | 5.1〜27.7 | 0.69 | 0.90 |
| EURJPY × GBPJPY | 5.7〜31.4 | 0.49 | 0.63 |
| AUDJPY × NZDJPY | 3.8〜26.4 | 0.47 | 0.84 |
| EURUSD × USDCHF | 5.0〜23.8 | 0.53 | 0.97 |
※各組32通りの設定ごとの値です。月の回数は、設定によって最も少ないものと多いものの幅です。
PF1.0に届いた設定は、160通りのうち1つもありませんでした。月の回数は多い設定で20〜30回ほどあり、「回数を稼ぐ」という狙いには近づいていましたが、その回数がそのまま損失を積み上げる形になっていました。
12か月で設定を選び、次の3か月で確かめるウォークフォワードも8回行いましたが、選ぶ段階の基準(PF1.15以上など)を満たす設定がなく、8回とも「採用なし」でした。
費用を引く前から負けていた
「費用に勝てなかった」のかを確かめるため、160通りの取引をすべてまとめて、3段階の費用でPFを計算し直しました(直近1年、合計27,214回)。
| 見積もり | 全設定まとめたPF | PF1.0以上の設定 |
|---|---|---|
| ① 滑りなし(テスターのスプレッドだけ) | 0.58 | 1/160 |
| ② 通常 | 0.52 | 0/160 |
| ③ 厳しめ | 0.38 | 0/160 |
費用を厳しくするほどPFは下がりますが、①の時点ですでに0.58でした。唯一①でPF1.0を超えた設定(EURUSD×USDCHF、PF1.06)も、通常の費用を入れると0.97になります。
直近1年だけがたまたま悪かったのかも見るため、2020年からの年ごとに、全設定をまとめたPF(②通常)も出しました。
| 年 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026※ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| PF | 0.75 | 0.70 | 0.82 | 0.67 | 0.53 | 0.49 | 0.48 |
※2026年は10月上旬までです。
どの年もPFは1.0を下回っていました。少なくとも今回のルールでは、「1時間足でズレが広がったら、そのうち戻る」という前提そのものに頼れなかった、というのが正直な結果です。
直近1年の勝率は約32%(通常の費用、全設定まとめて)で、平均利益は226円、平均損失は201円でした(0.01ロット×2本)。ズレが戻って利益になる回より、戻る前に損切りや時間切れになる回のほうがずっと多かったことになります。
この検証から考えたこと
- 「相関が高い」と「ズレが戻る」は別のこと2つのペアがふだん似た動きをしていても、離れたズレがすぐ戻るとは限りません。片方の通貨だけに材料が出ると、ズレはそのまま広がることがあります。
- 費用は2本分かかるペアトレードは1回で2本を売買するので、スプレッドも滑りも2本分です。今回は費用を引く前から負けていましたが、仮にわずかに勝てるロジックでも、費用で消えやすい形だといえます。
- 回数が多いことは、それだけでは強みにならない月20〜30回の取引があっても、1回あたりの期待値がマイナスなら、回数は損失を増やすだけです。回数を見るときは、必ずPFや期待値と合わせて見るようにしています。
まとめ
よく似た動きをする通貨ペア5組で、ズレが戻るほうに張るペアトレードを160通り試しました。直近1年はすべてPF1.0未満で、スリッページを入れる前の時点で負け越していました。2020年以降のどの年も同じ傾向でした。
今回のルールでは採用を見送りました。うまくいかなかった検証も、同じところで迷う方の参考になればと思い、そのまま記録しておきます。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品やEAの売買・利用を推奨するものではありません。記載の数値は開発中の自作ロジックのバックテスト結果です。スリッページとスプレッドの上乗せは仮定の値で、実際の約定とは異なります。今回のロジックは不採用とし、運用には使っていません。バックテストと実際の運用では、スプレッドや約定の違いにより結果が変わることがあります。FX・CFD取引には元本を失うリスクがあります。過去の成績は将来の成果を保証しません。投資判断はご自身の責任で行ってください。